中国販路拡大コンサルタントをしている太田早紀です。
当ブログでは中国の会計・税務・労務に関する規定や実務について解説しております。
当ブログをご覧の皆様におかれましては、中国の会計・税務・労務について知り、中国子会社の財務面のサポートや中国での販路拡大にお役立ていただけると幸いです。
【最新政策】中国行政処罰法【参考訳】⑤
2021年1月22日付で全国人民代表常務委員会にて「中国行政処罰法」が通過し、2021年7月15日から施行されます。全部で86条ありますので、章ごとに分けて参考訳を掲載いたします。なお、主席令は憲法に次ぐ命令になるため、中国国内で非常に強い法的拘束をもたらします。
部門:全国人民代表常務委員会
政策名:中国行政処罰法(中国主席令第70号)
中国語:中华人民共和国行政处罚法
【参考訳】
第五章 行政処罰の決定
【第一節 一般規定】
第三十九条 行政処罰の実施機関、立案根拠、実施手続き及び救済措置等の情報は公開するものとする。
第四十条 公民、法人若しくはその他組織が行政の管理秩序に違反する行為をし、法に基づいて行政処罰を受ける場合、行政機関は必ず事実を調査究明するものとする。違法の事実が不明確で、証拠が不十分な場合は、行政処罰を与えてはならない。
第四十一条 行政機関が法律、行政法規の規定に基づいて違法事実を収集、確定するために電子技術監視設備を使用する場合、電子技術監視設備が基準を満たし、合理的に設置され、明確に表示されていることを確認するために、法的及び技術的な審査を受け、設置場所を社会に公開するものとする。
電子技術監視設備が記録する違法事実は、真実、明確、完全、正確でなければならない。行政機関は記録の内容が要件を満たしているか審査するものとする。未審査或いは審査結果が要件を満たしていない場合は、行政処罰の証拠としてはならない。
行政機関は速やかに当事者に違法事実を通知し、当事者の照会、陳述及び弁明のために便宜を図るため、情報提供手段若しくはその他の措置を講じるものとする。当事者が享有する陳述権や弁明権を制限或いは変質させて制限してはならない。
第四十二条 行政処罰は、法律を管理する資格を有する法執行官により行うものとする。法執行官の数は、法律に別段の定めがある場合を除き、2名を下回ってはならない。
法執行官は文明的な方法で法を執行し、当事者が有する合法的な権利と利益を尊重し、保護するものとする。
第四十三条 法執行官が事件と直接の利害関係を持つ者である場合、若しくはその他の関係者である場合、公正な法の執行に影響を及ぼす可能性があるため、回避しなければならない。
当事者は、法執行官が事件と直接の利害関係を持つ者若しくはその他の関係者であり、公正な法の執行に影響を及ぼす可能性があると認識する場合は、申請を回避する権利がある。
当事者が回避申請を提出する場合は、行政機関は法に基づいて審査し、行政機関の責任者により決定するものとする。決定がなされるまで、調査を中断してはならない。
第四十四条 行政機関が行政処罰の決定を下す前に、当事者に仮決定された行政処罰の内容及び事実、理由、根拠を通知する必要があり、また当事者が法に基づいて享有できる陳述、弁明、聴聞等の権利を教示する必要がある。
第四十五条 当事者は陳述及び弁明を行う権利を有する。行政機関は当事者の意見を十分に聴収する必要があり、当事者が提出した事実、理由及び証拠に対して、審査しなければならない。当事者が提出した事実、理由或いは証拠となる物は、行政機関は受領しなければならない。
行政機関は当事者が陳述、弁明をした結果、更に重い処罰を課してはならない。
第四十六条 証拠物件は以下を含みます。
(一) 文書による証拠
(二) 物的証拠
(三) 視聴資料
(四) 電子データ
(五) 証人による証言
(六) 当事者の陳述
(七) 鑑定による意見
(八) 捜査記録と現場記録
証拠は必ず調査及び検証をした上で事実に一致したものであり、また事件の事実根拠として使用することができる。
違法な手段で入手した証拠は、事件の事実根拠として使用してはならない。
第四十七条 行政機関は法に基づいて文字、録音等の形式で、行政処罰の開始、聞き取り調査、審査、決定、送達、執行等の全過程を記録し、ファイルに保存しなければならない。
第四十八条 社会に一定の影響を及ぼす行政処罰の決定は、法に基づいて公開するものとする。
公開されている行政処罰の決定が、法に基づいて変更、撤回、違法性の認識若しくは無効の認識がなされる場合、行政機関は三日以内に行政処罰の決定に関する情報を撤回し、かつ説明理由を公開しなければならない。
第四十九条 重大な感染症の発生などの緊急事態が生じた場合、緊急事態による社会な被害を抑制、軽減また解消するために、行政機関は法律に基づいて、発生に対応してとられた措置の違反に対して、迅速かつ厳しい罰則を課さなければならない。
第五十条 行政機関及びその職員は、法律に基づき行政処罰の実施過程中に知り得た国家機密、商業機密若しくは個人のプライバシーについて、秘密を守らなければならない。
【第二節 簡易プロセス】
第五十一条 違法の事実が極めて確実であり、かつ法的根拠がある場合は、公民に対して200元以下の罰金、法人若しくはその他組織に対して3,000元以下の罰金若しくは警告なる行政処罰を課し、現地で行政処罰の決定を下すことができる。法律に別途規定がある場合は、その規定に準ずる。
第五十二条 法執行官が現地で行政処罰の決定を行う場合は、当事者に法執行証書を開示し、所定の書式と番号を付した行政処罰決定書に記入し、かつ現地で当事者するものとする。当事者が署名を拒否した場合は、行政処罰決定書にその旨を注記するものとする。
前項に規定する行政処罰決定書は、当事者の違法行為、行政処罰の種類や根拠、罰金額、時間、場所、行政への再審査請求、行政訴訟を提起する方法や期限及び行政機関の名称を記載するものとし、かつ法執行官の署名若しくは押印をしなければならない。
法執行官が現地で行った行政処罰の決定は、管轄の行政機関にて届け出をするものとする。
第五十三条 現地で行われた行政処罰の決定について、当事者は本法第六十七条から第六十九条の規定に基づいて履行するものとする。
【第三節 通常プロセス】
第五十四条 本法第五十一条が規定する現地で行う行政処罰を除き、行政機関は公民、法人若しくはその他組織が法に基づいて行政処罰を課すべき行為を行ったことを発見した場合、包括的、客観的かつ公正な調査を行い、関連証拠を収集しなければならない。必要に応じて、法律、法規の規定に基づき、調査を行うことができる。
立案基準を満たしている場合は、行政機関は速やかに立案しなければならない。
第五十五条 法執行官が調査若しくは検査を行う際、当事者若しくは関係者は主体的に法定証書を提出するものとする。当事者若しくは関係者は法執行官に対して法定証書の提出を要求する権利を有する。法執行官が法定証書を提出しない場合は、当事者若しくは関係者は調査若しくは検査を拒否することができる。
当事者若しくは関係者が事実通りに質問に回答し、かつ調査若しくは検査に協力し、拒否若しくは妨害をしてはならない。質問若しくは検査は書面にて記録するものとする。
第五十六条 行政機関は証拠を収集する際、証拠の抜き取り調査を行うことができる。証拠が消失していたり、入手が難しい状況の場合は、行政機関の責任者の承認を得て、事前に登録や保存をすることができ、かつ7日以内に速やかに処理の決定を行うものとし、この期間は、当事者若しくは関係者は証拠を廃棄若しくは譲渡してはならない。
第五十七条 調査終了後、行政機関の責任者は調査結果の審査を行い、状況に応じて個別に以下の通り決定するものとする。
(一)確実に行政処罰の対象となる違法行為である場合は、状況の重大性及び具体的な状況に基づいて行政処罰の決定を行う。
(二)違法行為が軽微であり、法に基づき行政処罰を課さないこともできる場合は、行政処罰を課さない。
(三)違法事実が成立していない場合、行政処罰を課さない。
(四)違法行為に犯罪の疑いがある場合は、司法機関に移送する。
状況が複雑若しくは重大な違法行為に対して行政処罰を課す場合は、行政機関の責任者は合議体で話し合いを行うものとする。
第五十八条 下記の状況のいずれかに該当する場合は、行政機関の責任者は行政処罰の決定をする前に、行政処罰の決定の法審査に従事する担当者による法審査を実施しなければならない。法審査を実施していない若しくは法審査が完了していない場合は、決定を行ってはならない。
(一)重大な公共の利益に関わる状況
(二)聴聞手続きを経ており、当事者若しくは第三者の重大な利益に直接関係する状況
(三)複数の法律関係が絡み、困難で複雑な案件
(四)その他の法律や法規が規定する法審査を実施すべき状況
初めて行政処罰の決定を行う法審査に従事することになった行政機関の担当者は、国家統一の法律専門従事資格試験に合格し、法律専門従事資格を取得するものとする。
第五十九条 行政機関が本法第五十七条の規定に基づいて行政処罰を課す場合、行政処罰決定書を作成するものとする。行政処罰決定書は次の事項を記載するものとする。
(一)当事者の氏名若しくは名称、住所
(二)法律、法規、規則に違反した事実と証拠
(三)行政処罰の種類と根拠
(四)行政処罰の履行方法と期限
(五)行政上の再考申請、行政訴訟の経緯と期限の提起
(六)行政処罰の決定を行った行政機関の名称と決定を行った日
行政処分決定書には、行政処分決定書を発行した行政機関の押印を必要とする。
第六十条 行政機関は行政処罰の事案を立案した日から90日以内に行政処罰の決定を行うものとする。法律、法規、規則に特別の定めがある場合は、その規定を準用する。
第六十一条 行政処罰決定書は宣告後にその場で当事者に交付するものとする。当事者が不在の合は、行政機関は七日以内に『中国民事訴訟法』の関連規定に基づいて、行政処罰決定書を当事者に送付するものとする。
当事者が同意し、かつ確認書に署名した場合、行政機関はFAX、電子メール等の方法により、行政処罰決定書等を当事者へ送付することができる。
第六十二条 行政機関及びその他の法執行官は、行政処罰の決定を行う前に、本法第四十四条、第四十五条の規定に基づいて当事者に仮決定の行政処罰の内容及び事実、理由を告知することなく、若しくは当事者の陳述、弁明の聴取を拒否することなく、行政処罰の決定を行ってはならない。当事者が明らかに陳述若しくは弁明を放棄する場合はこの限りではない。
【第四節 聴聞プロセス】
第六十三条 行政機関が次の行政処罰の決定を起草する場合は、当事者に聴聞を請求できる権利について教示するものとし、当事者が聴聞を請求する場合は、行政機関は聴聞会を開催するものとする。
(一)罰金額が比較的多額である
(二)比較的多額な違法所得の没収、比較的価値が高い違法財産の没収
(三)資質等級の降格、許可証の撤回
(四)生産停止や営業停止の命令、廃業命令、就業制限
(五)その他比較的重大な行政処罰を課す場合
(六)法律、法規、規則が特別に定める場合
当事者は行政機関が開催する聴聞会の費用を負担しない。
第六十四条 聴聞会は次の手続きによって実施するものとする。
(一)当事者が聴聞を請求する場合は、行政機関の告知後から五日以内に提出するものとする。
(二)行政機関は聴聞会を開催する七日前までに、当事者や関係者に聴聞の時間、場所を通知するものとする。
(三)国家機密、商業機密若しくは個人のプライバシーに関し法に基づいて保護の対象とするものを除き、聴聞会は公開で開催する。
(四)聴聞は行政機関が指定した本事案の調査員以外の者が主宰する。当事者は主宰者が本事案に直接利害関係があると見做す場合、申請を回避する権利を有する。
(五)当事者は自ら聴聞に参加しても良いし、一人から二人の代理人に委託することも出来る。
(六)当事者及びその代理人が正当な理由なく聴聞会への出席を拒否したり、許可なく聴聞会の途中で退席した場合は、聴聞の権利を放棄したものと見做し、行政機関は聴聞を終了させる。
(七)聴聞の開催時、調査員は当事者の違法事実、証拠及び行政処罰の意見書を提示し、当事者は弁明及び反対尋問を行う。
(八)聴聞会は筆録を行うものとする。当事者若しくはその代理人に筆録を提出し、間違がないかを確認した後、署名若しくは押印するものとする。当事者若しくはその代理人が署名若しくは押印を拒否した場合、聴聞会の主宰者はその旨を筆録にに記載しなければならない。
第六十五条 聴聞会の終了後、行政機関は聴聞会の筆録を根拠に、本法第五十七条の規定に基づいて、決定を行うものとする。
関連記事:
【顧問サービスのご案内】 弊社では各種顧問サービスを提供しております。
●月次での記帳代行
●毎月記帳証票と会計データを日本事務所に郵送して頂き、日本事務所内でのチェック
●弊社日本人担当者が3か月に1回訪中し、顧問先様の社内での記帳証票等の往査
顧問先様のご要望にあわせてサービス内容を柔軟にカスタマイズいたします。
コメント