中国販路拡大コンサルタントの太田早紀です。
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【企業所得税】増値税に関わる優遇政策は企業所得税の課税対象かどうか?

上海市税務総局の微信公式アカウント内で、増値税に関わる優遇政策により企業が以下3種類を受領した場合に企業所得税の課税対象になるかどうかについての解説がありましたので、今回紹介いたします。
(※原文の「不征税」を「不課税」と翻訳しています。日本における「不課税」や「非課税」は考慮していません)
以下3種類とは、増値税の加算控除額、増値税輸出還付金、仕入増値税未控除額の還付(中国語で仕入増値税未控除額を「留抵税額」と言い、税法上の用語であって、勘定科目名ではありません)を指します。
目次:
1、増値税の加算控除額
2、増値税輸出還付金
3、前期末の仕入増値税未控除額の還付
1、増値税の加算控除額
下記の規定によると増値税の加算控除額は、企業所得税上の「不課税収入」に該当しません。従って、優遇税制の一つである「増値税の加算控除」を適用している企業は、企業所得税の計算時に課税所得に含めて企業所得税額を算出し、申告納付する必要があります。
規定名:「財政部国家税務総局による、特定用途財政資金の企業所得税の処理に関する通達(財税[2011]70号)」
当規定の第一条より、企業が県以上の政府財政部門などから得た収入総額に含めるべき財政資金が同時に以下要件を満たす場合、「不課税収入」として扱い課税所得の計算時に収入から控除することができます。
(一)企業が規定の資金特定用途の支出明細を提出できること。
(二)財政部門または資金の配分を実施する政府部門が、当該資金について特定の資金管理方法もしくは具体的な管理要求を具備していること。
(三)企業が当該資金及びその資金で発生した支出を別々に計算していること。
2、増値税輸出還付金
下記の規定によると、優遇税制の一つである「増値税の輸出還付金」を享受している企業は、受領した還付金と関連の「仕入増値税額」または「納付済み増値税額」と相殺すべきであり、企業所得税の課税対象にはなりません。
(※関連の「仕入増値税額」や「納付済み増値税額」について、実際の会計処理においては勘定科目名が異なるかと存じます)
規定名:「財政部及び国家税務総局による 財政資金、行政事務費用、政府基金に関わる企業所得税政策の問題に関する通達」(財税[2008]151号)
当規定の第一条(一)より、企業が獲得する各種の財政資金は、国家投資に属するもの及び資金使用後に元本の返還を要するものを除き、企業の当期の収入総額に含めると規定しています。
本条でいう財政資金とは、企業が政府及びその関連部門から得た財政補助金、助成金、利子補給付融資及びその他各種の専用の財政資金を指し、直接減免する増値税及び即納付即還付(※中国語で「即征即退」)、先納付後還付(※中国語で「先征後退」)、先納付後返金(中国語で「先征後返」)の各種税金を含みますが、企業が規定に基づき受領する増値税の輸出還付金は含まれていません。国家投資とは、国が投資家の立場で企業に直接投資し、かつ関連規定に基づいて企業の払込資本金(株式資本)を増加させる直接投資のことです。
当規定で財政資金には企業が規定に基づき受領する増値税の輸出還付金を含めないと明確に規定し、増値税の輸出還付金が会計上の損益や収入総額に属さず、また不課税収入に属さないことから、企業所得税の課税対象にはなりません。
3、仕入増値税未控除額の還付
下記の規定によると、企業が仕入増値税未控除額の還付を受ける場合、還付を受けた後に当期の仕入増値税未控除額と相殺する必要があり、企業所得税の課税対象にはなりません。
規定名:「財政部、税務総局、税関総署による、増値税改革政策の深化に関する公告」(財政部、税務総局、税関総署公告2019年第39号)
当規定の第八条より、納税者は仕入増値税未控除額が還付された時、当期の仕入増値税未控除額と相殺する必要があります。
納税者が受領した仕入増値税未控除額の還付金は、将来にわたって控除可能な仕入増値税を減少させますが、実質的には納税者に経済的便益の流入をもたらすものではなく、政府補助金またはその他の収益でもなく、収入として認識するものでもないため、企業所得税の課税対象にはなりません。
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