上海MTAC、合同会社MTACジャパンの太田です。
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【企業所得税】年度決算の課税所得の算出方法(2023年度版)
中国では毎年5月末までが年度決算の時期にあたります。年度決算では、四半期ごとに申告してきた企業所得税の確定申告を行います。増値税は月次あるいは四半期で決算申告しているため、年度決算は基本的には実施されません。
今回は、年度決算時に必要な資料、税務調整(加算・減算)後の課税所得および納付すべき企業所得税額に関する算出方法を紹介いたします。
目次:
1、年度決算時に必要な資料
2、課税所得や企業所得税額に関する算出方法
3、2023年度の優遇税制について
1、年度決算時に必要な資料
一般的なフローとして、日系現地法人は会計師事務所による年度会計監査を受けた後、会計師事務所による監査意見を表明した意見書、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、持分変動表、注記および課税所得額調整表を含む監査報告書を受領します。
監査報告書は、エクセルやワードなどの初稿版が先に発行されるので、企業側は金額や内容の確認を行います。企業側が金額や内容に問題ないと判断すれば、製本された正式版が発行されます。監査する側が発行する監査報告書を企業側が確認するというのは、いささか不思議な感じもしますが、中国の慣習だと思っております。
さて前置きが長くなりましたが、企業所得税の確定申告では、監査報告書の一つである課税所得額調整表が重要な役割をもちます。
※課税所得額調整表について。
中国現地法人が費用又は損失として経理した金額で、当期の所得の金額の計算上、損金の額に算入されないものや益金算入されるものなどを対象に算出をし、加算調整すべき額あるいは減算調整すべき額を反映した明細書です。日本の法人税確定申告書に置き換えると、「別表4の所得の金額の計算に関する明細書」が相当するものと思われます。
2、課税所得や企業所得税額に関する算出方法
↓2023年度の確定申告書の主表を参照にして、一部項目を簡素化しています。
課税所得は、税前利益を基準に課税所得額調整表に記載された加算調整額及び減算調整額に基づいて加算或いは減算し、繰越欠損金が残っている場合は繰越欠損金を補填し、そうして算出された金額(上表のE)を指します。
課税所得の算出後、企業所得税率を乗じて企業所得税額を算出します。
中国では従来から毎年減税政策が実施されていますので、減税政策の対象となる企業は当期の減税政策に基づき減税額を算出します。企業所得税額から減税額を減算した金額が、当年度の納付すべき企業所得税額の総額になります。
当年度の納付すべき企業所得税額の総額から当期の四半期申告時に納付した企業所得税額を差し引いた金額がプラスの場合は追納し、マイナスの場合は還付になります。
2023年は100万元以内の課税所得に対して2.5%の税率が適用される大幅減税政策が廃止され、代わりに300万元以内の課税所得に対して5%の税率が適用される政策が実施されました(以下参照)。
3、2023年度の優遇税制について
1、対象企業
【対象企業】 小規模企業(中国語で小型微利企业)
小規模企業とは、下記の4つの要件をすべて満たしている企業のことです。
【要件】
① 国家が制限や禁止をしている事業に従事していないこと。
② 年間の課税所得額が300万元以下であること。
③ 従業員数が300人以下であること。
④ 資産総額が5,000万元以下であること。
2、対象期間と年間の課税所得額の範囲と企業所得税率
【対象期間】 2023年1月1日から2027年12月31日までの5年間
【年間の課税所得額の範囲】300万元以下
【企業所得税率】 企業所得税率は5%
3、注意事項(小規模企業の4つの要件をすべて満たしていない場合)
小規模企業の4つの要件をすべて満たしていない場合、優遇政策が適用されず、原則の企業所得税率25%が適用されます。これより納付すべき企業所得税額が大幅に増加することを念頭に入れておくべきかと存じます。
例えば、4つの要件のうちの①③④を満たしていたとしても、②の年間の課税所得額が300万元を超えている場合は、小規模企業に該当しません。また企業所得税の確定申告において、課税所得額の加算調整などにより年間課税所得額か300万元を超えてしまった場合も同様に小規模企業ではなくなります。
【例1】年間課税所得額が300万元の場合、15万元が納付すべき企業所得税額です。
300万元×25%×20%=15万元 或いは 300万元×5%=15万元
【例2】年間課税所得額が301万元の場合、優遇政策は適用されませんので、75.25万元が納付すべき企業所得税額です。
301万元×25%=75.25万元
例1と例2の差額はわずか1万元ですが、例2は優遇政策が適用されず、原則の企業所得税率25%が適用され納付すべき企業所得税額が75.25万元になります。例1との差額は、60.25万元となり大幅に増加します。
4、参考訳
小規模企業および個人事業主の発展を一層支援するため、関連税金と費用の政策について以下の通り発表する。
一、2023年1月1日から2027年12月31日まで、個人事業主の年間課税所得のうち200万元以下について、個人所得税の徴税を半減する。個人事業主は、現行の個人所得税に関するその他の優遇政策に加え、この優遇政策を享受することができる。
二、2023年1月1日から2027年12月31日まで、増値税の小規模納税者、小規模企業および個人事業主は、資源税(水資源税を除く)、都市維持建設税、固定資産税、都市土地使用税、印紙税(証券取引印紙税を除く)、耕作地占用税、教育費附加および地方教育費附加について、徴収または徴税を半減する。
三、年間課税所得額に25%を乗じた金額に小規模企業の税率20%を乗じて企業所得税を納税する政策を2027年12月31日まで延長する。
四、増値税の小規模納税者、小規模企業、個人事業主が、既に法に基づき、資源税、都市維持建設税、固定資産税、都市土地使用税、印紙税、耕作地占用税、教育費附加、地方教育費附加などその他の優遇政策を享受している場合、重ねて本公告第二条に規定する優遇政策を享受することができる。
従業員数には、企業と労働関係を締結した労働者数及び企業が受け入れた派遣労働者数を含む。従業員数と資産総額の基準は、企業の通年における四半期ごとの平均で決定される。
具体的な計算式は以下の通りである。
四半期平均値=(四半期期首+四半期期末)÷2
通年の四半期平均値=通年の四半期平均値の合計÷4
企業が年度の途中で事業活動を開始または終了した場合、その実際の事業期間を課税年度として、上記の関連基準を決定する。
小規模企業の判定は、確定申告の結果に基づいて行われる。増値税の一般納税者として登録され、国家が制限または禁止していない業種に従事し、同時に申告期間の前月末日現在の従業員数が300人以下、資産総額が5,000万元以下という2つの条件を満たす新規設立企業は、初回の確定申告前に小規模企業として申告することで、第二条に規定する優遇政策を享受することができる。
六、本公告の発表前に、徴税された関連税金は、納税者が翌月に納付する税額と相殺、または還付する。本公告の発表前に既に登記を抹消している場合、遡及して享受することはできない。
『財政部および税務総局による小規模企業に対する「6項目の税金と2項目費用」の減免政策の更なる実施に関する公告』(財政部および税務総局公告2022年第10号)および『財政部および税務総局の小規模企業および個人事業主に対する所得税の優遇政策に関する公告』(財政部および国家税務総局公告2023年第6号)のうち、個人事業主の所得税優遇政策は2023年1月1日から施行停止とする。
小規模企業および個人事業主の発展を一層支援するための税金と費用の政策に関する公告
(財政部税務総局公告 2023 年第 12 号)
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