【個人所得税】KOLインフルエンサーなどの個人への支払い、『労務報酬』の税金とは?⑦
- ohtashmtac
- 2021年1月15日
- 読了時間: 4分
更新日:9月27日
こんにちは。上海MTACおよび合同会社MTACジャパンの太田です。
このブログでは、中国における会計・税務・労務の規定や実務について、わかりやすく解説しています。中国現地法人の財務管理のご参考として、また中国での販路拡大の一助となれば幸いです。

中国法人による個人への業務委託の中でも、近年はSNSマーケティングの発展に伴い、インフルエンサー(中国では「KOL(Key Opinion Leader)」と呼ばれます)への委託が増加しています。
そこで本稿では、こうした個人への業務委託に関連する税務、すなわち「労務報酬」に対する個人所得税について、上海市税務総局の解説も交えながら、わかりやすくご紹介いたします。
なお本記事は、全7回にわたる記事シリーズの第7回「具体例でわかる計算方法の紹介」にあたります。シリーズでは、制度の基礎から具体的な計算方法に至るまでを段階的に解説しておりますので、ぜひ文末の「あわせて読みたい」リンクから、他の記事もあわせてご覧ください。
7、具体例でわかる計算方法の紹介
-居住者個人の労務報酬所得について-
【背景】
小王さんは会社に勤務している従業員ですが、休暇を利用して、他社から設計デザイン業務を請け負い、報酬として3,000元を受け取りました。
【税額の算出】
今回のように、スポット的あるいは月次単位での報酬が4,000元以下の場合、控除できる費用額は一律800元と定められています。
したがって、小王さんが受け取った報酬にかかる課税所得額および個人所得税額は、次のとおりです:
課税所得額 = 3,000元 - 800元 = 2,200元
個人所得税額 = 2,200元 × 20% = 440元
※この税率は「個人所得税源泉徴収率表(二)」に基づいて適用されます。
課税所得額 | 源泉徴収税率 | 速算控除額 | |
1 | 20,000元以下 | 20% | 0 |
2 | 20,000元超~50,000元以下 | 30% | 2000 |
3 | 50,000元を超える | 40% | 7000 |
【納税義務】
個人所得税は、源泉徴収義務者である他社が徴収・申告納税を行います。
一方、小王さん自身も、個人所得税の確定申告の際に、個人所得税の確定申告を行う必要があります。
※確定申告の詳細については、【こちらの記事】をご参照ください。
-居住者個人の原稿執筆所得について-
【背景】
中王さんは会社に勤務する従業員ですが、休暇を利用して旅行関連の原稿を執筆し、報酬として10,000元を受け取りました。
【税額の算出】
今回のようにスポット的または月次単位での収入が4,000元を超える場合、控除可能な費用額は収入の20%とされます。また、費用控除後の金額に対してさらに70%を乗じた金額を課税所得額とし、「原稿執筆料所得」に適用される20%の源泉徴収税率で個人所得税を算出します。
課税所得額 = 10,000元 ×(1 − 20%)× 70% = 5,600元
個人所得税額 = 5,600元 × 20% = 1,120元
【納税義務】
個人所得税は、源泉徴収義務者である他社が徴収し、税務当局へ申告・納付します。
一方、中王さん自身も、個人所得税の確定申告の際に、個人所得税の確定申告を行う必要があります。
※確定申告の詳細については、【こちらの記事】をご参照ください。
-非居住者個人の特許権使用料所得について-
【背景】
老王さんは中国国内に住所を有していない非居住者個人です。訪中の際に、某企業に対して自身が保有する特許権の使用を許諾し、特許権使用料所得として20,000元を受け取りました。
【税額の算出】
非居住者が受け取る特許権使用料所得に対しては、以下のように課税所得額を計算し、「個人所得税源泉徴収率表(三)」を適用して税額を算出します:
控除可能費用額:収入の20%
税率:20%
速算控除額:1,410元
したがって、
課税所得額 = 20,000元 ×(1 − 20%)= 16,000元
個人所得税額 = 16,000元 × 20% − 1,410元 = 3,200元 − 1,410元 = 1,790元
【納税義務】
個人所得税は、源泉徴収義務者である企業側が老王さんに代わって徴収・申告・納税を行います。

中国において、非居住者の個人に対して以下のような支払いを行う場合:
労務報酬の支払い
原稿執筆料の支払い
特許権の使用料の支払い
企業等の源泉徴収義務者は、スポット単位または月次単位で個人所得税を源泉徴収し、申告・納付を行う必要があります。
一方、非居住者個人にとっては、この源泉徴収によるスポット単位または月次単位の申告がそのまま確定申告に該当するため、翌年に行う総合所得の確定申告は不要となります。
【根拠となる規定】
「国家税務総局 新個人所得税法の全面施行に係る徴収管理の経過措置に関する若干の問題についての公告」 (国家税務総局公告〔2018〕第56号)
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