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【企業所得税】関連企業からの借入金に対する支払利子の規定

更新日:5 日前

上海MTACおよび合同会社MTACジャパンの太田です。

当ブログでは、中国の会計・税務・労務に関する規定や実務について解説しております。

本ブログの内容が、皆さまの中国子会社における財務面のサポートや、中国での販路拡大の一助となりましたら幸いです。

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上海市税務総局の公式アカウントにおいて、関連企業からの借入金に係る支払利子の損金算入に関する基準、関連規定、および計算方法について解説が掲載されていました。

本記事では、その内容をご紹介いたします。


目次:
1.損金算入の基準
2.特別な規定
3.計算方法
4.根拠規定

1.損金算入の基準 


企業が関連企業からお金を借りる場合には、「借入金(=債権性投資)」と「出資金(=権益性投資)」のバランスに関して、税務上のルールが定められています。


もし借入金が出資金に比べて過度に大きくなると、その借入に対して支払った利息のうち、一定の基準を超える部分は経費(=損金)として認められません。



(1)借入金と出資金のバランスによる基準

関連企業への利息の支払いは、次の比率以内の借入金であれば損金算入が認められます。

  • 金融企業:5対1 → 出資金の5倍までの借入金で支払った利息は経費にできる

  • 金融企業以外の企業:2対1 → 出資金の2倍までの借入金で支払った利息は経費にできる

=借入金が出資金に対して “多すぎる” と判断されると、利息の一部が損金不算入になります。



(2)利率の基準(非金融企業の場合)

非金融企業が、非金融企業から借入を行う場合は、同期間の金融機関の貸付利率を上限として、支払利息の損金算入が認められます。

「金融機関ならこの利率で貸すはず」という水準までが損金として認められる、というイメージです。


(3)例外規定(本通達第2条)

企業が税法に基づき必要な資料を提示し、

  • 取引が独立企業間取引の原則に適合することを証明できる場合 

    または

  • 企業の実効税負担率が国内関連者より高くないことを証明できる場合

には、関連企業に支払った利息は、課税所得の計算上、損金算入が認められます。



(4)超過利息の取り扱い

基準を超えていると判断された利息については、当該事業年度はもちろん、翌年度以降も損金算入することは認められません。



2. 「債権性投資(借入金)」について


企業所得税法第46条における「債権性投資(借入金)」とは

企業所得税法第46条における「債権性投資(借入金)」とは、企業が関連企業から直接または間接的に受ける資金調達のうち、次のいずれかに該当するものを指します。

  • 元本の返済が必要であること

  • 利息の支払いが必要であること

  • 形式は異なるが、利息支払と同様の負担が実質的に生じるもの

つまり、返済義務+利息負担がある資金調達は、形式にかかわらず「債権性投資」とみなされます。


企業が関連企業から間接的に受ける「債権性投資(借入金)」には、次のようなケースが含まれます。

  1. 関連企業が、無関係の第三者を介して実質的に提供する借入れ 

  2. 無関係の第三者が形式上資金を提供しているものの、関連企業が保証し、かつ連帯責任を負う借入れ 

  3. その他、関連企業から間接的に受け入れた、実質的に負債と認められる借入れ



企業所得税法第46条における「出資(=権益性投資)」とは

企業が受け入れる出資のうち、

  • 元本の返済が不要であり、

  • 利息の支払いも不要で、

  • 投資家が企業の純資産に対して所有権(持分)を有するもの

を指します。

また、企業所得税法第46条でいう「基準」とは、国務院の財政部門および税務主管部門が別途定める基準を指します。


 

3. 金融機関の同期間における類似貸付利率に関する規定


企業が契約に基づき初めて利息を支払い、その利息を損金算入(税前控除)する場合には、支払利息が妥当な水準であることを税務局に示す必要があります。


そのため、企業は以下の資料を提出しなければなりません。

「金融機関の同期間における類似の貸付利率に関する説明書」


(1)説明書に記載すべき内容

この説明書には、契約締結時点において、

  • 同じ省内の金融機関が提供する、

  • 同期間・同条件の貸付利率(同期・同類貸付利率)

を記載する必要があります。

※公告では「本省のいずれかの金融機関」と明記されています(=1社でOK)。


(2)“金融機関”の範囲

ここでいう金融機関には次が含まれます。

  • 銀行

  • ファイナンス会社

  • 信託会社

  • その他、政府関連部門の認可を受け、融資業務が許可された企業

=単なる企業ではなく「融資業務の免許を持つ企業」が対象。

 

(3)“同期間における類似貸付利率”の意味

「同期間における類似貸付利率」とは、金融機関がほぼ同じ条件で貸付を行った場合の貸付利率を指します。

一致すべき条件の例:

  • 貸付期間

  • 貸付金額

  • 担保の有無

  • 借入企業の信用力

  • その他、融資条件に影響する要素

公告では、次のどちらでも認められています:

  • 金融機関が公表している「同期・同類の平均貸付利率」

  • 金融機関が特定企業に対して実際に提供した貸付利率




2.特別な規定


1. 独立企業間原則に基づく例外

企業が税法およびその実施条例の規定に従い必要な資料を提出し、その取引が独立企業間取引の原則に適合していることを証明できる場合、または、当該企業の実効税負担が国内の関連企業よりも高くない場合、国内関連企業に実際に支払った利息は、課税所得額の計算上、損金算入が認められます。


2. 金融業務と非金融業務を兼営する企業の場合

企業が金融業務と非金融業務の両方を行っている場合、関連企業に対して支払った利息は、合理的な方法によって業務ごとに区分して計算しなければなりません。

もし合理的な方法による区分計算ができない場合には、「その他の企業」と同じ比率(=2対1)に基づいて、損金算入が認められる利息額を計算します。



3. 計算方法

以下では、実際のケースを用いて、支払利息の損金算入額の計算方法を分かりやすく解説します。


① 借入金と出資金の比率が影響するケース(2対1の基準を適用)

甲社と乙社はともに製造業の企業であり、2023年に甲社は乙社へ 5,000万元を出資しています。

その後、乙社は2023年3月1日に甲社から2億元を借入れた(返済期間:10か月、年利6%)。

その時点の金融機関の同期間・類似貸付利率は 4.8% です。

 

(★ポイント)損金算入額は「出資金 × 2倍 × 金融機関利率」で決まる

関連企業からの借入れについては、損金算入できる利息額は

  • 借入金と出資金の比率(2対1)

  • 金融機関の同期同類貸付利率(4.8%)

の2つの制限を受けます。


つまり、損金算入できる利息額は次の式で求めます👇

損金算入額の計算式

出資金 5,000万元× 2倍(比率の上限:2対1)× 金融利率 4.8%× 10か月 ÷ 12か月

400万元


❌ 間違った計算(損金算入できません)

借入金 2億元 × 年利6% × 10/12 = 1,000万元

これは「実際の支払利息」であり、損金算入できるのは、このうち400万元までとなります。

           


② 実効税負担の比較により、比率制限を適用しないケース

エレクトロニクス社(企業所得税率:15%)は、2023年1月1日に親会社(企業所得税率:25%)から原材料購入のために借入を行いました。

  • 借入額:5,000万元

  • 期間:2年間

  • 年利:10%

  • 金融機関の同期同類貸付利率:7%

  • 親会社による出資額:2,000万元  


(★ポイント)実効税負担が関連会社より低くない → 比率制限(2対1)を適用しない

税法では、以下の条件を満たす場合、借入金と出資金の比率(2対1の制限)は適用されません:

借入企業の実効税負担率が、国内の関連企業よりも高くない場合

ここでは:

  • 子会社:税率 15%

  • 親会社:税率 25%

子会社の税負担率は親会社より低くはないため、比率制限は適用不要。


つまり、損金算入できる利息額は次の式で求めます👇

損金算入額の計算式

2023年度の支払利子の損金算入額=借入額5,000万元×銀行金利7%=350万元になります。



4.根拠規定

1.中華人民共和国企業所得税法(中華人民共和国国家主席令第63号)

2.中華人民共和国企業所得税法実施条例(中華人民共和国国務院令第512号)

3.関連企業の支払利子の損金算入の基準に関する税務政策上の問題に関する財政部及び国家税務総局の通達(財税[2008]第121号) 

4.企業所得税に関する若干の問題に関する国家税務総局の公告(国家税務総局公告2011年第34号)


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