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上海市政府も意欲的!?ノマドビザと外国人就労の現行制度

更新日:10月22日

こんにちは。上海MTACおよび合同会社MTACジャパンの太田です。

このブログでは、中国における会計・税務・労務の規定や実務について、わかりやすく解説しています。中国現地法人の財務管理のご参考として、また中国での販路拡大の一助となれば幸いです。


上海市政府が発表した「ノマドビザ」に関する意見書について紹介しています。
上海市政府が発表した「ノマドビザ」に関する意見書について紹介しています。


目次

✅ 1. 上海市が検討する「ノマドビザ」

✅ 2. 外国人の就労に関する現行制度

✅ 3. 「在中外国人の就業管理規定」参考訳



近年、世界中で急速に増えている「デジタル遊牧民(ノマドワーカー)」。PCとネット環境さえあれば国や地域に縛られず働ける彼らは、ソフトウェア開発・デザイン・ライティング・オンライン教育など、リモートで成果を納品できる職種を中心に拡大を続けています。


中国語では「数字游民」と呼ばれ、直訳すれば“デジタル時代の遊牧民”。欧州や東南アジアをはじめとする多くの国々がすでに専用の「ノマドビザ」を発行し、経済政策の一環として受け入れを加速させています。日本も2024年に制度をスタートさせました(出入国在留管理庁:https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities10_00001.html)。


そして今、上海でも「世界のノマドを呼び込みたい」という動きが具体化しつつあります。高速インターネット環境、多様な文化、そして国際都市としてのビジネス基盤を兼ね備える上海が本格的に動き出せば、アジアにおける新たなノマドのハブ都市として注目を集める可能性は極めて高いでしょう。



✅ 1. 上海市が検討する「ノマドビザ」

中国国内でもデジタル遊牧民(ノマドワーカー)は 7,000万~1億人規模 にのぼると言われ、世界でもすでに50か国以上が「デジタル遊牧民ビザ」を発行しています。日本も2024年に制度をスタートさせたばかりです。

そんな中、上海市政府も「世界のノマドを呼び込みたい」 と意欲を高めています。


👉 実際に「上海人大(上海市人民代表大会)」において、“ノマドビザ”の導入が正式に提案されました。その提案書の中には、日本がノマドビザをスタートさせた事例まで紹介されており、まさにアジアの都市間競争に上海が本気で参入しようとしている姿勢がうかがえます。


…どうやら上海市政府の党員代表に🔥火をつけてしまったようですね。



提案書の具体策(抜粋)

上海人大に提出された提案書では、実に具体的な施策が列挙されています:

  • 税制優遇・法人登録サポート:ノマド向けの税制優遇や簡便な法人・金融サービスの整備

  • 専用窓口・ワンストップサービス:申請~審査~発給を一元化し、医療保険・銀行口座なども同時サポート

  • 明確な申請条件とプロセス:安定収入証明・無犯罪記録を前提に簡略化された審査手続き

  • 積極的なPR戦略:国際メディアやSNSを活用し、「上海=ノマドの目的地」と発信

  • 生活インフラ整備:多様な住居、交通利便性、文化活動、滞在トラブルのサポート体制

  • 国際連携:他国ノマドビザ制度との相互承認・協力関係を模索

  • 漕泾デジタル遊牧民村構想:上海初の「ノマド村」を試験的に設置し、産業拠点+生活拠点として展開


実務的な視点

現時点ではあくまで「提案段階」であり、制度化・実施に至るまでには一定の時間がかかると考えられます。ただし、もし導入が現実のものとなれば、上海はアジアにおける「ノマドハブ都市」として強い存在感を放つことは間違いありません。


一方で、現行制度下では外国人が中国で働くために厳格なルールが存在します。そのため、企業も個人も「まだ制度がない」現状を正しく理解しておくことが重要です。次の項目では、現行の法律上の要件を整理します。



✅ 2. 外国人の就労に関する現行制度

法律上の原則

「在中外国人の就業管理規定」第八条では、Zビザを取得して入国し、その後《外国人就業証》と居留証を取得した場合のみ、中国国内での就労が可能と定められています。家族帯同ビザや観光ビザなどの保持者は、いずれも就労できません。


厳格な罰則

同規定第二十七条には罰則が設けられており、Zビザを持たずに就労した外国人、あるいは許可証を取得せずに無断で外国人を雇用した雇用主には処罰が科されます。

処分は公安機関が「中華人民共和国外国人入境出境管理法実施細則」第44条に基づいて実施し、重大な場合は国外退去を命じられることもあります。

  • 外国人本人に対する規定・・・無断就労は1,000元以下の罰金、情状が重大な場合は国外退去。

  • 雇用主に対する規定・・・5,000~50,000元の罰金、さらに送還費用の全額負担。



時代とのギャップ

「在中外国人の就業管理規定」は1996年に制定されたもので、当時はインターネットやリモートワークが一般的ではなく、「デジタル遊牧民」や「ノマドワーカー」といった概念は存在していませんでした。そのため、現代的な働き方を想定した制度にはなっていないのが実情です。


今後の展望

こうした状況の中で、上海市人民代表大会において「ノマドビザ」導入が正式に提案されたことは、中国にとって大きな一歩といえるでしょう。制度が実際に導入されれば、上海はアジアにおける「ノマドハブ都市」として存在感を高めることが期待されます。



ただし現状では、家族帯同ビザや観光ビザでの就労は法律上で認められていないため、また罰則が重いことからも、実務上は認められない(NG)と理解しておくのが安全です。



第四十四条 

外国人本人に対する規定

中華人民共和国労働部またはその授権部門の承認を受けずに、私的に就業した外国人については、その任職または就業を終了させると同時に、1,000元以下の罰金を科すことができる。情状が重大な場合には、一定期間内の出国を命じる


雇用側に対する規定

承認を得ずに外国人を私的に雇用した単位(会社・組織)や個人については、その雇用行為を終了させると同時に、5,000元以上5万元以下の罰金を科すことができる。さらに、当該外国人を送還するために要するすべての費用を負担させる。



✅ 3. 「在中外国人の就業管理規定」参考訳

第一章 総則

第一条 外国人の中国における就業管理を強化するため、関係する法律・法規の規定に基づき、本規定を制定する。


第二条 本規定にいう「外国人」とは、『中華人民共和国国籍法』の規定に従い、中国国籍を有しない者を指す。本規定にいう「外国人の中国における就業」とは、定住権を持たない外国人が、中国国内で合法的に社会労働に従事し、労働報酬を得る行為を指す。


第三条 本規定は、中国国内で就業する外国人および外国人を雇用する用人単位(雇用者)に適用する。ただし、中国に駐在する外国の大使館・領事館、国連の駐中国代表機構、その他国際機関において外交特権と免除を享有する人員には適用されない。


第四条 各省、自治区、直轄市の人民政府の労働行政部門およびその権限を受けた地市級労働行政部門が、外国人の中国における就業の管理を担当する。


第二章 就業許可

第五条 雇用主が外国人を雇用する場合、当該外国人について就業許可を申請し、承認を得て『中華人民共和国外国人就業許可証』(以下「許可証」という)を取得した後でなければ雇用してはならない。


第六条 雇用主が外国人を雇用して従事させる職位は、特別な必要があり、かつ国内に適切な人材が一時的に不足しているものでなければならず、国家の関連規定に違反してはならない。雇用主は、外国人を営業性の文芸演出(営利目的の公演活動)に従事させてはならない。ただし、本規定第九条第三項の規定に該当する人員についてはこの限りでない。


第七条 外国人が中国で就業するには、以下の条件を備えていなければならない。

(一)18歳以上で、健康であること。

(二)従事する業務に必要な専門技能と相応の職務経験を有すること。

(三)犯罪記録がないこと。

(四)雇用先が確定していること。

(五)有効なパスポート、またはパスポートに代わるその他の国際旅行証件(以下「代替証件」という)を所持していること。


第八条 外国人が中国で就業する場合、Zビザを所持して入国しなければならない(相互免签協定がある場合は協定に従う)。入国後に《外国人就业证》(以下「就業証」)と外国人居留証件を取得して、初めて中国国内で就業することができる。

居留証件を取得していない外国人(すなわちF、L、C、Gビザ保持者)、中国で留学・実習中の外国人、職業ビザを持つ外国人の随行家族は、中国国内で就業することはできない。特殊な場合には、用人単位(雇用主)が本規定に基づく審批手続きを経て「許可証」を申請し、外国人はその許可証をもって公安機関にて身分変更を行い、就業証および居留証を取得した後にのみ就業できる。

また、中国に駐在する外国の使節団・領事館、国連システムやその他国際機関の代表部職員の配偶者が中国で就業する場合には、「外国駐中国使領館および国連システム組織駐中国代表機関職員の配偶者の任職に関する規定」(中国外交部)に従い、本条第2項に定められた審査手続きを経て、関連する手続きを行う必要があります。

許可証と就業証は労働部が統一して作成する。


第九条 次のいずれかに該当する外国人は、就業許可および就業証の申請が免除される。

(一)中国政府が直接出資して雇用した外国人の専門技術者・管理者、または国家機関や事業単位が出資して雇用し、かつ本国または国際的な権威ある技術管理部門・業界団体から高級技術職称または特殊技能資格証明を認定された外国人専門技術者・管理者で、外国専門家局が発行する《外国専門家証》を所持している者。

(二)「外国人の中国における海上石油作業許可証」を所持し、海上石油作業に従事する外国人で、上陸を必要とせず、特殊技能を有する労務者。

(三)文化部の許可を受け、《臨時営業演出許可証》を持って営業性の文芸公演を行う外国人。


第十条 次のいずれかに該当する外国人は、許可証の申請が免除され、入国後にZビザおよび関連証明書に基づき直接就業証を取得できる

(一)中国と外国政府間または国際組織間の協定・協議に基づき、中外協力・交流プロジェクトを実施するために招聘されて中国で就労する外国人。

(二)外国企業の中国常駐代表機構における首席代表または代表。


第三章 申請と審査

第十一条 雇用主が外国人を雇用する場合は、《外国人雇用申請表》(以下「申請表」)を記入し、労働行政主管部門と同級の業界主管部門(以下「業界主管部門」)に申請を提出し、以下の有効な書類を提供しなければならない。

(一)雇用予定の外国人の履歴証明

(二)雇用意向書

(三)外国人を雇用する理由の報告書

(四)当該外国人がその職務に従事するための資格証明

(五)当該外国人の健康状態証明

(六)法律・法規で定められたその他の書類

業界主管部門は、本規定第六条・第七条および関連する法律・法規に基づき審査・承認を行う。


第十二条 業界主管部門の承認を得た後、雇用主は申請表を持参し、所在地の省・自治区・直轄市の労働行政部門、またはその委任を受けた地市級労働行政部門で認可手続きを行わなければならない。

省・自治区・直轄市の労働行政部門、または委任を受けた地市級労働行政部門は、専任機関(以下「発証機関」)を指定し、許可証の発行業務を具体的に担当させる。

発証機関は、業界主管部門の意見および労働市場の需要状況に基づき審査・認可を行い、認可後に雇用主へ「許可証」を交付する。


第十三条 中央レベルの用人単位、または業界主管部門を持たない雇用主が外国人を雇用する場合は、直接労働行政部門の発証機関に申請を提出し、就業許可の手続きを行うことができる。

外商投資企業が外国人を雇用する場合は、業界主管部門の承認を要せず、契約・定款・批准証書・営業許可証および本規定第十一条に定められた書類をもって、直接労働行政部門の発証機関に「許可証」を申請することができる。


第十四条 中国での就業を許可された外国人は、「許可証」および自国の有効なパスポートまたはパスポートに代わる証件をもって、中国の在外使館(大使館、領事館、弁事処)にてZビザを申請しなければならない。

第九条第二項に該当する者(=中国海洋石油総公司発行の「外国人の中国における海上石油作業許可証」を持つ者)は、中国海洋石油総公司が発行した通知書や電報に基づきZビザを申請する。

第九条第三項に該当する者(=文化部の許可を得た商業公演を行う外国人)は、文化部の承認文書に基づきZビザを申請する。

また、本規定第十条第一項に該当する者(=国際協力・交流プロジェクトで来中する者)は、交流プロジェクト書類に基づきZビザを申請し、第十条第二項に該当する者(=外国企業常駐代表機構の首席代表や代表)は、工商行政管理部門の登記証明に基づきZビザを申請する。


第十五条 雇用主は、雇用した外国人が入国してから15日以内に、以下の書類を持参し、当初の発証機関にて外国人の「就業証」の手続きを行わなければならない。

  • 許可証(《外国人就業許可証書》)

  • 被雇用外国人との労働契約書

  • 有効なパスポートまたはパスポートに代わる国際旅行証件

また、この際に 《外国人就業登記表》にも記入しなければならない。

就業証は、発証機関が規定する地域内でのみ有効 とされる。


第十六条 すでに就業証を取得した外国人は、入国後30日以内に就業証を持参し、公安機関にて居留証の申請手続きを行わなければならない。

居留証件の有効期限は、就業証の有効期限に基づいて決定される


第四章 労働管理 

第十七条 用人単位は、被雇用外国人と法律に基づき労働契約を締結しなければならない。労働契約の期間は最長で 5年間 とする。契約期間満了により契約は終了するが、本規定第十八条に従い承認手続きを経た場合は更新が可能である。


第十八条 被雇用外国人と用人単位との労働契約が満了した場合、その 就業証は自動的に失効 する。更新が必要な場合、用人単位は契約満了の30日前までに労働行政部門へ契約延長の申請を行い、承認を得たうえで就業証の更新手続きを行わなければならない。


第十九条 外国人が中国での就業期間の延長や、就業地域・雇用先の変更を認められた場合は、 10日以内に所轄の公安機関で居留証件の延長または変更手続 を行わなければならない。


第二十条 被雇用外国人と用人単位(雇用主)との労働契約が解除された場合、当該用人単位は速やかに労働部門および公安部門に報告し、当該外国人の 就業証と居留証件を返納 するとともに、公安機関で 出境手続き を行わなければならない。


第二十一条 用人単位(雇用主)が外国人に支払う賃金は、現地の最低賃金基準を下回ってはならない


第二十二条 中国で就業する外国人の労働時間、休憩・休暇、労働安全衛生、社会保険については、国家の関連規定に従って実施 される。


第二十三条 外国人が中国で就業する際の雇用主は、就業証に記載された雇用主と一致しなければならない

外国人が発証機関の定める区域内で雇用主を変更する場合で、なお同一職業に従事する場合には、原発証機関の承認を受け、就業証の変更手続を行う必要がある

た、外国人が発証機関の定める区域外で就業する場合や、区域内でも雇用主を変更して異なる職業に従事する場合は、新たに就業許可手続きを行わなければならない


第二十四条 中国の法律に違反し、中国公安機関から居留資格を取り消された外国人については、用人単位(雇用主)は労働契約を解除し、労働部門はその外国人の就業証を取り消さなければならない


第二十五条 用人単位と被雇用外国人との間に労働争議が発生した場合は、「中華人民共和国労働法」および「中華人民共和国労働争議調停仲裁法」 に基づいて処理する。


第二十六条 労働行政部門は就業証の年次審査制度を実施する。

用人単位が外国人を雇用して1年が満了するごとに、満了前30日以内に労働行政部門の発証機関にて就業証の年検手続きを行わなければならない

期限を過ぎて手続きを行わなかった場合、その就業証は自動的に失効する。

また、外国人が中国で就業中に就業証を紛失または破損した場合は、直ちに元の発証機関で紛失届出・再発行・交換の手続きを行わなければならない


第五章 罰則

第二十七条本規定に違反し、就業証を申請せずに無断で就業した外国人、または許可証を取得せずに無断で外国人を雇用した用人単位(雇用主)に対しては、公安機関が「中華人民共和国外国人入境出境管理法実施細則」第44条に基づき処理する。


第二十八条 労働行政部門の就業証検査を拒否した外国人無断で用人単位を変更した外国人無断で職業を変更した外国人、または無断で就業期間を延長した外国人に対しては、労働行政部門がその就業証を回収し、公安機関に対しその居留資格の取消しを申請する。

公安機関によって出国強制送還が必要とされる場合、その送還費用は雇用主または当該外国人本人が負担するものとする。


第二十九条 就業証や許可証を 偽造・改ざん・不正使用・譲渡・売買 した外国人または用人単位に対しては、労働行政部門が当該就業証および許可証を没収し、不法所得をすべて没収するとともに、1万元以上10万元以下の罰金を科す。

情状が重大で犯罪を構成する場合には、司法機関に移送し、法律に基づいて刑事責任を追及する。


第三十条 発証機関または関係部門の職員が、職権を濫用し、違法に料金を徴収し、職務上の不正行為(えこひいきや不正操作)を行った場合、犯罪を構成すれば法律に基づき刑事責任を追及する。

犯罪に至らない場合には、行政処分を科す。


第六章 附則

第三十一条 中国の台湾および香港・マカオ地区の住民が内地で就業する場合は、『台湾および香港・マカオ住民の内地就業管理規定』に基づいて処理する。


第三十二条 外国人が中国の台湾および香港・マカオ地区で就業する場合には、本規定は適用されない。


第三十三条 個人経済組織および公民個人が外国人を雇用することは禁止する。


第三十四条 省・自治区・直轄市の労働行政部門は、公安などの部門と共同で、本規定に基づき当該地域の実施細則を制定することができる。その場合、労働部・公安部・外交部・対外貿易経済合作部に届け出なければならない。


第三十五条 本規定の解釈は労働部が行う。


第三十六条 本規定は1996年5月1日より施行する。同時に、労働人事部と公安部が1987年10月5日に公布した「居留証件を取得していない外国人および来中留学している外国人の中国での就業に関する若干規定」は廃止される。




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