【企業所得税】各種減損損失に対する税務上の取扱い

中国販路拡大コンサルタントの太田早紀です。

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【企業所得税】各種減損損失に対する税務上の取扱い


 上海市税務総局のWeChat公式アカウントに、各種資産の減損損失について、会計及び税務に関する規定や申告調整の参考例、企業所得税確定申告書の別表への記載例がありましたので紹介いたします。



目次:
1、会計上の規定
2、税務上の規定
3、申告調整の参考例
4、企業所得税確定申告書の別表の記載例


1、会計上の規定

■規定:企業会計準則 第8号-資産の減損(資産減損損失の認識)

 第十五条:回収可能価額の測定の結果、資産の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を資産の減損損失として認識及び当期の損益に計上し、また同時に当該資産の減損引当金を計上しなければならない。



 第16条:資産の減損損失の認識後、減損処理した資産の減価償却費または償却費については、資産の残存耐用年数において、減損処理後の帳簿価額(見積正味残存価額を控除した額)が合理的に配分されるように、将来の期間において相応の調整をしなければならない。



 第17条:一旦認識した減損損失を、将来の会計期間において戻し入れることは認めない。

  • 会計処理

①減損損失の計上

 借方:各種資産の減損損失

 貸方:各種資産の減損引当金


②期末に当期の損益に振替計上

 借方: 当年度利益(※当期の損益のこと)

 貸方:各種資産の減損損失


規定:企業会計準則(中国財政局のサイト)


 
2、税務上の規定

■規定①:中国企業所得税法

 第十条:課税所得を計算する際、以下の費用は控除してはならない。

(一)投資者に支払った株式利子、配当金等の権益性投資収益

(二)企業所得税税額

(三)税収滞納金

(四)罰金、罰則および財産の没収による損失

(五)本法第九条に規定されている以外の寄付金支出

(六)賛助支出

(七)未承認の引当金に対する支出

(八)収入の獲得に関連しないその他支出



■規定②:中国企業所得税法実施条例

 第五十五条:企業所得税法第十条(七)項にいう未承認の引当金に対する支出とは、国務院の財政、税務主管部門の規定に準拠しない各種資産の減損引当金及びリスク引当金などの引当金支出を指す。



■規定③:企業所得税の実施における税務処理上の諸問題に関する国家税務総局の通知(国税函【2009】202号)

 第二条:『中国企業所得税法実施条例』第五十五条に基づき、財政部や国家税務総局により承認された損金算入可能な引当金を除いて、その他業種や企業が計上した各種資産の減損引当金やリスク引当金などの引当金は、一律に損金算入を認めないものとする。


 2008年1月1日以前に『旧企業所得税法』の規定に基づいて計上された各種引当金は、2008年1月1日以降、財政部や国家税務総局の承認を得ていない場合、企業は以降年度に実際に発生した相応の損失について、先ずは各種引当金の残高と相殺しなければならない。



■規定④:企業所得税の課税所得額の若干の問題に関する公告(国家税務総局公告2014年第29号)

五、固定資産の減価償却に関する企業所得税の処理

(三)企業が会計上の規定に基づいて固定資産の減損引当金を計上した場合、損金算入してはならず、その減価償却費は引き続き税法で定められた固定資産の課税標準に基づいて計算し、損金算入しなければならない。


 

3、申告調整の参考例

 中国国内企業の甲企業は、2020年に以下の取引が生じ、申告及び納付していた。



【固定資産:耐用年数を経過した設備の廃棄損失】

 購入した設備1台が耐用年数を経過したため、通常の廃棄処理をした。当該設備の帳簿価格は10万元、減価償却累計額は8万元、廃棄時の残存価格収入は1.13万元(売上増値税額を含む)、処理費用は0.5万元であった。

 

  • 会計処理

 当該資産の損失計上額(100,000 - 80,000) - 売却収入 11,300/1.13 +処分費用 5,000 = 15,000元

  • 税務処理

 資産の課税標準(※1):100,000 - 80,000 = 20,000元

 賠償金収入(※2):0元

 資産売却収入(※3):11,300/1.13 - 5,000 = 5,000元

 資産損失の税収金額(※4)=資産の課税標準-賠償金収入-資産売却収入=20,000-0-5,000=15,000元



 申告調整額(※5)=当該資産の損失計上額-資産損失の税収金額=0元、これより税務上と会計上の差異はありません。



 ※1~5・・・下記4の『企業所得税確定申告書の別表(資産損失税前控除及び納税調整明細書(A105090)』を参考。

 

【棚卸資産:たな卸資産減耗損、商品評価損】

 Aクラスの在庫商品のたな卸資産減耗損は帳簿価格26万元、仕入増値税額4.42万元であり、当該棚卸資産の価値低下による商品評価損は3万元、責任者からの賠償金1万元を、『営業外支出』科目に計上していた。


  • 会計処理

 たな卸資産減耗損及び商品評価損の計上額:260,000 + 44,200 - 30,000 - 10,000 = 264,200元

  • 税務処理

 資産の課税標準(※1):260,000+44,200=304,200元

 賠償金収入(※2):10,000元

 資産売却収入(※3):0元

 資産損失の税収金額(※4)=資産の課税標準-賠償金収入-資産売却収入=304,200-10,000-0=294,200元



 申告調整額(※5)=たな卸資産減耗損及び商品評価損の計上額-資産損失の税収金額=-30,000元、30,000の減算調整となります。



 ※1~5・・・下記4の『企業所得税確定申告書の別表(資産損失税前控除及び納税調整明細書(A105090)』を参考。

 

【売掛金:貸倒損失】

 2019年末に乙企業に対する売掛金残高5万元について、貸倒引当金を1万元、営業スタッフからの賠償金を1万元計上していた。2020年に乙企業が倒産し、回収不能と判断された。


  • 会計処理

 当該資産の損失計上額:50,000-10,000-10,000=30,000元

  • 税務処理

 資産の課税標準(※1):50,000元

 賠償金収入(※2):10,000元

 資産売却収入(※3):0元

 資産損失の税収金額(※4)=資産の課税標準-賠償金収入-資産売却収入=50,000-10,000-0=40,000元


 申告調整額(※5)=当該資産の損失計上額-資産損失の税収金額=-10,000元、10,000元の減算調整となります。


 ※1~5・・・下記4の『企業所得税確定申告書の別表(資産損失税前控除及び納税調整明細書(A105090)』を参考。

 

4、企業所得税確定申告書の別表の記載例

 上述3の参考例について、企業所得税確定申告書の別表(資産損失税前控除及び納税調整明細書(A105090)への記載は以下の通りになります。


 

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