【個人所得税】個人へ業務委託する際の労務報酬と個人所得税の扱い
- ohtashmtac
- 9月27日
- 読了時間: 4分
更新日:9月29日
こんにちは。上海MTACおよび合同会社MTACジャパンの太田です。
このブログでは、中国における会計・税務・労務の規定や実務について、わかりやすく解説しています。中国現地法人の財務管理のご参考として、また中国での販路拡大の一助となれば幸いです。

中国現地法人が個人に業務を委託するケースは少なくありません。
本稿では、そのような個人への業務委託に関連する税務、すなわち「労務報酬」に対する個人所得税について、上海市税務総局の解説も交えながら、分かりやすくご紹介いたします。
目次:
✅ 1. 労務報酬の定義
✅ 2. 給与賃金と労務報酬の違いとは?
✅ 3. 労務報酬の個人所得税の計算方法✅ 1. 労務報酬の定義
労務報酬所得とは、「個人」が以下に記載された役務を提供することによって得る所得を指します。
📌 役務提供の範囲
以下のような役務の提供によって得られる所得は、労務報酬所得に該当します。
設計、装飾、設置、製図
化学検査、測定、医療
法律、会計、コンサルティング
学術講演、翻訳、校閲
書画、彫刻、映画、録音、映像、演出、上演
広告、展示、技術サービス
紹介業務、ブローカー業務、代理業務
その他の役務提供
※上記に明示されていない役務であっても、「その他の役務提供」に含まれると解される場合があります。
📖 根拠となる規定
『中国個人所得税法実施条例』(中国国務院令第707号、2019年1月1日施行)
✅ 2.給与賃金と労務報酬の違いとは?
💼 給与賃金:雇用関係がある場合
給与賃金所得とは、個人が企業・機関・団体・学校・部隊・事業所などに雇用され、被雇用者として労働を提供することで得る報酬を指します。
🤝 労務報酬:雇用関係がない場合
労務報酬所得とは、個人が企業・機関・団体・学校・部隊・事業所などに雇用されていない状態で、独立した立場から技能や芸術等の役務を提供することで得る報酬を指します。
📌 実務上の取扱い
💼 雇用契約に基づく場合(雇用関係あり)
「給与賃金所得」として個人所得税を源泉徴収・納付する必要があります。
🤝 業務委託契約に基づく場合(雇用関係なし)
「労務報酬所得」として個人所得税を源泉徴収・納付します。
また、税務登記または臨時税務登記を行っていない個人については、業務委託報酬が500元を超える場合、増値税および附加税の課税対象となります。そのため、個人は自ら申告し、発票を発行する必要があります(税務局での代理発行を含む)。
なお、増値税・附加税については、企業側に源泉徴収義務はありません。
📖 根拠となる規定
『国家税務総局「個人所得税を徴収する若干問題の規定」の通知』(国税発〔1994〕89号)
『企業所得税の損金算入証憑管理弁法』公布に関する公告 (国家税務総局公告2018年第28号)9条
✅ 3. 労務報酬の個人所得税の計算方法
中国居住者の個人に対して労務報酬を支払う場合、企業などの源泉徴収義務者は、スポット単位または月次単位で個人所得税を源泉徴収・申告納付する必要があります。
中国居住者個人にとって、この源泉徴収は「予納(中国語:予繳)」と位置づけられ、あくまで暫定的な税額です。そのため、翌年に行う総合所得確定申告において、労務報酬所得を総合所得に合算し、年間の課税所得額を確定させます。
納付額に不足がある場合は追納💸、過払いの場合は還付申請💰を行います。
※「総合所得確定申告」と表記する理由:中国の個人所得税申告には「総合所得」「分類所得」「非居住者所得」「株式譲渡所得」などの区分があり、労務報酬等は総合所得に含まれるためです。
📌 労務報酬所得の源泉徴収計算
■ 控除可能費用額の基準 ✂️
収入が4,000元以下の場合:一律 800元 を控除
収入が4,000元超の場合:収入の20% を控除
■ 課税所得額の算出方法 🧮
課税所得額 = 収入 − 控除可能費用額
■ 適用税率と計算例 📊
(居住者個人用「個人所得税の源泉徴収率表二」に基づく)
例①:労務報酬 3,000元
課税所得額 = 3,000 − 800 = 2,200元
税額 = 2,200 × 20% = 440元
例②:労務報酬 10,000元
課税所得額 = 10,000 − 2,000 = 8,000元
税額 = 8,000 × 20% = 1,600元
例③:労務報酬 62,500元
課税所得額 = 62,500 − 12,500 = 50,000元
税額 = 50,000 × 30% − 2,000 = 13,000元

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