【増値税】出口転内銷(輸出品を内販へ転用)とは? 増値税の申告方法と税務上の留意点
- ohtashmtac
- 9月23日
- 読了時間: 6分
更新日:9月24日
こんにちは。上海MTACおよび合同会社MTACジャパンの太田です。
このブログでは、中国における会計・税務・労務の規定や実務について、わかりやすく解説しています。中国現地法人の財務管理のご参考として、また中国での販路拡大の一助となれば幸いです。

「出口転内銷」とは、さまざまな要因により、当初は海外に輸出される予定であった製品や、すでに輸出された製品の販売ルートを、国際市場から国内市場へ切り替えることを指します。これにより、企業は国内販売(内銷)を通じて新たな販路を開拓することが可能となります。
※「出口転内銷」は「みなし国内販売」とも呼ばれます。
では、輸出から国内販売へ切り替える場合、
免税・還付方法(免退税方式)
免税・控除・還付方法(免抵退税方式)
のそれぞれにおいて、増値税の申告はどのように行うべきでしょうか。さらに、仕入増値税(進項税)と売上増値税(銷項税)はどのように処理すべきでしょうか。
これらの点について、上海市税務総局が公表した解説をもとに、以下にご紹介いたします。
目次:
✅ 1.免税・還付方法(免退税方式)における処理
✅ 2.免税・控除・還付方法(免抵退税方式)における処理
📝 3.参考法令✅ 1. 免税・還付方法(免退税方式)における処理
仕入に関する証憑は、「仕入増値税額の控除」に転用可能
免税・還付方法(免退税方式)では、仕入増値税額の処理は「還付(退)」にのみ限定されます。
すなわち、仕入段階で納付した増値税(いわゆる仕入増値税額)は、当初から「還付用(退税用途)」としてのみ取り扱われます。
免税・還付方法(免退税方式)を適用される貿易会社(商社)では、国内で仕入れた貨物は輸出貨物と物理的形態が一致し、数量対応も明確であるため、輸出段階では免税とされ、さらに仕入段階で納付した増値税が還付されます。これは輸出における増値税ゼロ税率の原則に合致しています。
なお、貿易会社(商社)が輸出業務を行う場合、仕入発票に記載された増値税額は「還付用(退税用途)」としてのみ扱われ、仕入増値税額の控除には使用できません。
しかし、輸出貨物を国内販売へ切り替える場合には、《輸出貨物の国内販売転用証明書(出口貨物転内銷証明)》を取得することで、該当する仕入発票の仕入増値税額を控除に転用することが可能となります。
貿易会社(商社)が輸出貨物を国内販売へ切り替える場合、取得した増値税専用発票や輸入増値税専用納付書などの合法的な控除証憑に基づき、《輸出貨物の国内販売転用証明書(出口貨物転内銷証明)》を申請・取得します。
その後、当該証明書を取得した月の翌月の増値税申告期において、該当する仕入証憑の仕入増値税額を控除用途へ転用することが可能となります。
📝事例
貿易会社(商社)C社は、2025年1月に貨物を購入し、取得した増値税専用発票には金額10万元、増値税額1.3万元と記載されていました。
当該貨物は当初、輸出を予定していましたが、市場環境の変化により、同社はこれを国内販売へ切り替えることを決定しました。
《輸出貨物の国内販売転用証明書(出口貨物転内銷証明)》を取得する必要があります。
貨物を国内販売へ転用した後、C社は、当該国内販売が発生した月に主管税務機関へ申請を行い、《輸出貨物の国内販売転用証明書(出口貨物転内銷証明)》を取得する必要があります。
その上で、翌月の増値税申告期において、該当する仕入証憑に記載された仕入増値税額1.3万元を控除対象に振り替え、国内販売に係る売上増値税額から控除することが可能です。
👉ポイント
企業が輸出貨物を国内販売へ切り替える場合には、仕入増値税額の管理に関して、控除規定・証憑管理・税務処理の適時性といったリスクに十分留意する必要があります。
控除規定 規定に従って《輸出貨物の国内販売転用証明書(出口貨物転内銷証明)》を申請するとともに、仕入増値税額の控除にかかわる証憑が適法であるか、また異常な証憑の処理が適切に行われているかを確認することが求められます。
証憑管理 返品に関する協議書、品質検査報告書、返品貨物の通関書類など、関連書類の真正性を確認する必要があります。
税務処理の適時性 国内販売に転用された証明書の申請や、証明に対応する仕入増値税額控除の申告など、関連する税務事項が政策で定められた期限に沿っているかを確認することが重要です。
✅ 2.免税・控除・還付方法(免抵退税方式)における処理
仕入増値税額は、引き続き控除可能
免税・控除・還付方法(免抵退税方式)では、製造メーカーが取得した仕入増値税額は、そのまま売上増値税額から直接控除することができます。輸出から国内販売に切り替えた場合でも、仕入増値税額の控除用途について個別の調整を行う必要はありません。
📝事例
家電製造メーカーB社は、増値税の一般納税人であり、免税・控除・還付方法(免抵退税方式)の適用を受けています。同社はアメリカ向けにエアフライヤーを輸出し、その輸出FOB価格は人民元換算で700万元、適用される輸出還付率は13%となっています。
顧客による注文キャンセルを受け、B社はこの貨物を輸出ではなく国内販売に転用することを決定しました。以下は前提条件です。
国内販売価格(増値税込み):565万元
適用される輸出還付率:13%
当期の仕入増値税額合計:50万元
前期の繰越控除可能税額(留抵税額):0元
なお、当月はその他の取引は発生していないものと仮定します。
① 輸出時点での処理
1️⃣ 当期納付すべき税額
当月は国内販売がないため:
= 国内販売の売上増値税額(0)-仕入増値税額(50)
= ▲50万元(➡当期の還付額=50万元)
2️⃣ 免税・控除・還付税額
= 700万元 × 13%
= 91万元
3️⃣ 判定ルール
当期期末繰越控除可能税額(留抵税額) ≤ 当期免税・控除・還付税額の場合
当期の還付額 = 当期期末繰越控除可能税額(留抵税額)
当期免税・控除・還付税額 = 当期免税・控除・還付税額 - 当期の還付額
4️⃣ 当期の還付額
= 当期期末繰越控除可能税額(留抵税額)= 50万元
5️⃣ 当期免税・控除税額(免抵税額)
= 当期免税・控除・還付税額91万元-当期の還付額 50万元 = 41万元
② 輸出から国内販売(内銷)へ切り替えた場合
1️⃣ 輸出売上の取消
元の輸出収入 700万元 を取り消す。
2️⃣ 国内販売に切り替えた売上の計算
国内販売価格(増値税込み):565万元
売上(増値税抜き) = 565 ÷ (1+13%) = 500万元
売上増値税額 = 500 × 13% = 65万元
3️⃣免税・控除・還付税額の調整
輸出が取り消され国内販売へ切り替えたため、免税・控除・還付税額 = 0元
4️⃣ 当期の納付すべき税額
= 売上増値税額 65万元 - 仕入増値税額 50万元
= 15万元
📝 3.参考法令
「輸出貨物・役務に係る増値税および消費税管理弁法」公布に関する国家税務総局公告 (国家税務総局公告〔2012〕第24号)
「輸出貨物・役務に係る増値税および消費税政策に関する財務部・国家税務総局の通知」 (財税〔2012〕39号)
「輸出貨物・役務に係る増値税および消費税に関する問題についての国家税務総局公告」 (国家税務総局公告〔2013〕第65号)
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