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【企業所得税】従業員福利費の税務上の取扱いについて

こんにちは。上海MTACおよび合同会社MTACジャパンの太田です。

このブログでは、中国における会計・税務・労務の規定や実務について、わかりやすく解説しています。中国現地法人の財務管理のご参考として、また中国での販路拡大の一助となれば幸いです。


目次

1. はじめに

2. 企業所得税上の基本原則

3. よくある誤解と実務リスク

4. 実務上の対応ポイント

5. まとめ


1. はじめに


企業が日常的に計上している「従業員福利費」。

多くの企業では、「賃金給与総額の14%以内であれば損金算入できる」と理解されているのではないでしょうか。

しかし実務では、この理解だけでは不十分です。


税務調査では、

  • 実際に発生しているかどうか

  • 集団福利に該当するかどうか

といった点が厳しく確認されます。


実際に、上限を超えていないにもかかわらず、「発生していない費用の計上」や「一部従業員のみを対象とした支出」が否認され、企業所得税の追納や延滞金の支払いに至る事例もあります。


本稿では、従業員福利費の損金算入要件について、条文根拠と実務事例をもとに整理し、税務リスクを回避するためのポイントを解説します。



2. 企業所得税上の基本原則


企業所得税法上、従業員福利費は一定の範囲内で損金算入が認められています。

ただし、その可否は単に「福利費」という科目で処理しているかどうかではなく、実質に基づいて判断されます。


実務上の主な判断軸は、次の3点です。

① 全従業員を対象とする集団福利か

従業員全体を対象とした一般的な福利制度であるかどうかが重要です。

特定の役員や一部従業員のみを対象とする高額な支出は、福利費ではなく「給与」や「役員報酬」と判断される可能性があります。


② 合理性および実態があるか

名目上は福利費であっても、実質的に個人への利益供与とみなされる場合には、損金算入が否認されることがあります。

支出の目的や内容、社内規程との整合性が問われます。


③ 法令上の上限規定を満たしているか

福利費については、税法上の上限や計算基準が定められています。

代表的なものとして、賃金給与総額の14%という上限規定があります。

この上限を超過した部分は、損金算入が認められません。



3. よくある誤解と実務リスク


前章で述べたとおり、従業員福利費の損金算入は複数の判断要素によって決まります。

しかし実務上は、「賃金給与総額の14%以内であれば問題ない」と理解している企業も少なくありません。

もっとも、現行の企業所得税法では、単に上限規定を満たすだけでは足りません。

損金算入には、「実際に発生していること」 という要件も同時に満たす必要があります。

この点を見落とした結果、税務調査で指摘を受けるケースが見られます。



📌 損金算入要件の変更を知らずに処理した事例


上海市にあるS企業は、2018年度の法人税確定申告において、従業員福利費25万元を計上していました。

なお、当該金額は賃金給与総額の14%の上限を超えていませんでした。


内訳は以下の通りです。

  • 当年度に実際に発生した従業員福利費:20万元

  • 当年度に実際には発生していない従業員福利費:5万元


S企業は、「14%以内であれば問題ない」と判断し、25万元全額を損金算入しました。

しかし税務調査において、実際に発生していない5万元について指摘を受けました。

具体的には、発生していない部分について加算調整を行っていなかった点が問題とされたのです。



🧾 なぜ問題となったのか


『中華人民共和国企業所得税実施条例』第四十条では、従業員福利費について、

実際に発生した額であり、かつ賃金給与総額の14%を超えない部分のみ損金算入できる

と規定されています。

旧法では上限規定のみが強調されていましたが、新法では「実際発生額」という要件が明確に加えられています。


つまり、

✅ 上限以内であること

✅ 実際に発生していること

この2つを同時に満たす必要があります。



🔎 税務調査の結果


税務調査の結果、S企業は実際に発生していない5万元について課税所得の加算修正を行いました。

その結果、企業所得税の追納および延滞金を支払うこととなりました。

本件は、「14%以内であれば問題ない」という誤解が招いた典型的な事例といえます。



📌 従業員福利費の損金算入範囲を過大解釈した事例


上海市にあるY企業の2018年度の従業員福利費は、賃金給与総額の14%を超えていませんでした。

しかし、福利費科目の内訳には、以下の支出が含まれていました。

  • 一部の従業員を対象とするジム費用:5万元

  • 一部の従業員を対象とする旅行費用:15万元

(※ここでいうジム費用は、事務費用ではなくフィットネスジムの利用料を指します。)


Y企業は、14%以内であることを理由に、これらを全額損金算入していました。

しかし税務調査において、当該支出は「従業員福利費の損金算入範囲を過大解釈している」と判断され、指摘を受けました。

具体的には、これらの金額について加算調整を行っていなかった点が問題とされました。



🧾 なぜ問題となったのか


『国家税務総局 企業賃金給与及び従業員福利費の損金算入問題に関する通知』(国税函〔2009〕3号)では、損金算入できる従業員福利費の範囲が整理されています。


主な内容は以下の通りです。

(一) 集団福利に属するもの

従業員食堂、浴室、理髪室、医務室、託児所、療養院等の施設費や、福利部門従業員の賃金給与・社会保険料・住宅積立金・労務費等。

(二) 各種手当や非貨幣性福利

住宅手当、通勤手当、食事手当、医療手当、暖房手当、高温手当など。

(三) その他法令に基づく福利費

葬祭補助費など、規定に基づいて支出されるもの。


一方で、企業の収益と直接関連しない支出や、特定者のみを対象とする個人的利益供与的な支出は、福利費として認められない可能性があります。



🔎 税務調査の結果


税務調査の結果、Y企業は一部の従業員のみを対象としたジム費用5万元および旅行費用15万元について加算調整を行いました。

その結果、企業所得税の追納および延滞金を支払うこととなりました。

本件は、「14%以内であれば全額損金算入できる」という誤解が招いた典型的な事例といえます。

上限規定を満たしていても、支出の性質や対象範囲によっては損金算入が否認される可能性がある点に留意が必要です。



4. 実務上の対応ポイント


これまでの事例からも分かるように、従業員福利費については、単に上限規定を満たしているかどうかだけで判断することはできません。

税務リスクを回避するためには、次の点を事前に確認しておくことが重要です。


✅社内規程を整備し、支給基準を明確にする

✅全従業員を対象とする制度設計になっているか確認する

✅ 支出の発生事実を証憑で裏付けられるようにする

✅ 個人所得税との整合性を確保する


従業員福利費は、単なる経理処理の問題ではありません。

税務判断と労務管理が密接に関わる分野であるため、制度設計の段階から税務の観点を踏まえて整理しておくことが重要です。



5. まとめ


従業員福利費は、単に「賃金給与総額の14%以内」であればよいというものではありません。

発生事実の有無と、損金算入範囲の適否の双方を満たすことが求められます。

制度設計の段階から税務視点を持ち、実態に即した運用を行うことが、将来的な税務リスクの軽減につながります。


具体的な取扱いや、貴社の制度設計が適切かどうかの確認をご希望の場合は、お気軽にご相談ください。



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