【企業所得税】従業員福利費の税務上の取扱いについて
- ohtashmtac
- 2月19日
- 読了時間: 5分
更新日:2月21日
こんにちは。上海MTACおよび合同会社MTACジャパンの太田です。
このブログでは、中国における会計・税務・労務の規定や実務について、わかりやすく解説しています。中国現地法人の財務管理のご参考として、また中国での販路拡大の一助となれば幸いです。

目次
1. はじめに
2. よくある誤解と実務リスク
3. 実務上の対応ポイント
4. まとめ
1. はじめに
企業が日常的に計上している「福利費」。
多くの企業では、「賃金給与総額の14%以内であれば損金算入できる」と理解されているのではないでしょうか。
しかし実務では、この理解だけでは不十分です。
税務調査では、
実際に発生しているかどうか
集団福利に該当するかどうか
といった点が厳しく確認されます。
実際に、上限を超えていないにもかかわらず、「発生していない費用の計上」や「一部従業員のみを対象とした支出」が否認され、企業所得税の追納や延滞金の支払いに至る事例もあります。
本稿では、福利費の損金算入要件について、条文の根拠と実務事例を踏まえながら整理していきます。
2. よくある誤解と実務リスク
📌 事例① 実際発生要件を満たしていなかったケース
上海市のS企業は、2018年度に福利費25万元を計上しました。
金額は賃金総額の14%以内でした。
しかし、その内訳は次のとおりでした。
当年度に実際に発生した福利費:20万元
当年度には実際には発生していない福利費:5万元
🔎 税務調査の結果
S企業は14%以内であることを理由に全額損金算入していましたが、税務調査で未発生の5万元が否認され、加算調整の対象となりました。
✨ 判断ポイント
14%以内であっても、「実際発生額」でなければ損金算入できません。
📌 事例② 福利費の範囲を過大解釈したケース
上海市のY企業も、福利費総額は14%以内でした。
しかし内訳には、
一部従業員向けジム利用料:5万元
一部従業員向け旅行費用:15万元
が含まれていました。
🔎 税務調査の結果
これらの支出について、
集団福利性を欠く
企業収益との合理的関連性が弱い
を理由に、損金算入の対象としては適当ではないと判断され、20万元について加算調整が行われました。
✨ 判断ポイント
14%以内であっても、支出の性質によっては損金算入が認められない場合があります。
🧾 なぜ問題となったのか
― 法令構造からみる否認のロジック ―
従業員福利費の税前控除については、主に二つの法令が判断基準となります。
まず、『中華人民共和国企業所得税法実施条例』第四十条では、
実際に発生した額であり、かつ賃金給与総額の14%を超えない部分のみ損金算入(税前控除)できる
これは、福利費の損金算入には
① 実際に当年度に発生していること
② 賃金給与総額の14%以内であること
という要件を同時に満たす必要があることを意味します。
さらに、『国家税務総局 企業賃金給与及び従業員福利費の損金算入問題に関する通知』(国税函〔2009〕3号)では、どのような支出が「福利費」に該当するのかが具体的に整理されています。
主な内容は次のとおりです。
(一)集団福利に属する支出
従業員食堂、浴室、医務室、託児所等の施設関連費用および福利部門従業員の給与等。
(二)各種手当および非貨幣性福利
住宅手当、通勤手当、医療手当、高温手当など。
(三)その他、法令に基づき認められる福利費
葬祭補助費等、制度上明確に規定されているもの。
ここで重要なのは、14%という数字はあくまで損金算入限度額を示すものであり、支出の性質が適格であることを前提として初めて適用されるという点です。
したがって、実務上は次のような観点が重要な判断要素となります。
✨ ① 当該支出が福利費の範囲に該当するか
✨ ② 集団福利としての性質を有しているか
✨ ③ 企業の生産経営活動と合理的関連性があるか
✨ ④ 実際に発生した額であり、かつ賃金給与総額の14%以内であるか
本件はいずれも、「14%以内かどうか」という数量基準を先に重視し、支出の性質や適格性の検討が十分でなかった点に問題があったといえます。
3. 実務上の対応ポイント
これまでの事例からも分かるとおり、福利費については、単に14%の上限規定を満たしているかどうかだけで判断することはできません。
税務リスクを回避するためには、事前に次の点を確認しておくことが重要です。
✅ 社内規程を整備し、支給基準を明確にする
✅ 全従業員を対象とする制度設計になっているか確認する
✅ 支出が企業の生産経営活動と合理的関連性を有しているか検討する
✅ 支出の発生事実を証憑により裏付けられるようにする
✅ 個人所得税との整合性を確保する
福利費は、単なる経理処理の問題にとどまりません。
税務判断と労務管理が密接に関わる分野であるため、制度設計の段階から税務の観点を踏まえて整理しておくことが重要です。
4. まとめ
福利費は、単に「賃金給与総額の14%以内」であれば足りるというものではありません。
損金算入の可否は、当年度に実際に発生していること、そして法令上の福利費の範囲に該当していることを前提として判断されます。
14%という規定はあくまで数量的な上限を示すものであり、それだけで損金算入が認められるわけではありません。
支出の性質や運用実態を踏まえ、総合的に検討することが大切です。
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