【企業所得税】中国の繰越欠損金と繰越期間
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【企業所得税】中国の繰越欠損金と繰越期間

上海MTAC、合同会社MTACジャパンの太田です。

当ブログでは中国の会計・税務・労務に関する規定や実務について解説しております。

当ブログが、皆さまの中国子会社の財務面のサポートに繋がったり、また中国での販路拡大に少しでも役立つようでしたら幸いです。

 
【企業所得税】中国の繰越欠損金と繰越期間

目次
1、中国の繰越欠損金について
2、欠損金の繰越期間の種類
3、①欠損金の繰越期間・・・5年間の詳細
4、②欠損金の繰越期間・・・8年間の詳細
5、③欠損金の繰越期間・・・10年間の詳細




1、中国の繰越欠損金について

 繰越欠損金とは、企業所得税額の計算にあたり、翌事業年度以降の利益(所得)から差し引くことができる赤字の金額のことです。この税務上の赤字のことを欠損金といい、翌期以降に繰り越せる欠損金のことを繰越欠損金といいます。


 企業所得税は利益(所得)が出たときだけに課税されるので、欠損金が生じている場合は企業所得税の支払いはありません。

 なお中国には、日本のように赤字の企業も支払わなければならない均等割(※)がありません。


注:均等割・・・赤字でも地方に納付する法人税の制度(日本の税制度)。


2、欠損金の繰越期間の種類

 中国では対象となる企業によって欠損金の繰越期間が異なります。一般的には『中国企業所得税法』の第十八条より、5年間の繰越期間が適用されます。5年の他には8年と10年があり、適用するには資格などの条件や申請が必要です。


対象企業や欠損金の繰越期間は、以下の通りです。

①対象企業・・・特殊な規定を除き、通常営業している一般企業

 欠損金の繰越期間・・・5年間


②対象企業・・・新型コロナウイルスの影響を大きく受けた困難な産業に属する企業、

          映画産業に従事する企業

 欠損金の繰越期間・・・8年間


③対象企業・・・ハイテク技術企業及び科学技術型中小企業

 欠損金の繰越期間・・・10年間


3、①欠損金の繰越期間・・・5年間の詳細

◆対象企業:特殊な規定を除き、通常営業している一般企業

 

 企業の事業年度に発生した欠損金は、次年度以降に繰越することができ、次年度以降の企業所得税の補填に使用することができる。但し繰越期間は、最長で5年を超えてはならない。


 根拠規定: 『中国企業所得税法』第十八条


4、②欠損金の繰越期間・・・8年間の詳細

◆対象企業(一):新型コロナウイルスによる影響を比較的大きく受け操業が困難な企業


 新型コロナウイルスの影響を大きく受けた困難な産業に属する企業において2020年度に発生した欠損金は、繰越期間の上限が5年から8年に延長された。


(1)困難な産業に属する企業とは、交通運輸業、飲食業、宿泊業、観光業(旅行代理店及び関連サービス業、観光地経営業の2つを指す)の4業種を含み、具体的な判断は現行の『国民経済業種分類』を基準に行う。

(2)困難な産業に属する企業の2020年度の主要売上高が収入総額(不課税収入と投資収益を除く)の50%以上を占めるもの。

(3)新型コロナウイルスの影響を大きく受けた困難な産業に属する企業が規定に基づき繰越期間の延長政策を適用する場合、2020年度の企業所得税確定申告時に、電子税務局で『繰越欠損年限延長政策適用の声明(适用延长亏损结转年限政策声明)』を提出する必要がある。



◆対象企業(二):映画産業に従事する企業


 映画産業に従事する企業において2020年度に発生した欠損金は、繰越期間の上限が5年から8年に延長された。


 映画産業に従事する企業は、映画の製作、配給、上映に従事する企業に限られ、インターネット、電気通信網、ラジオや テレビなどの情報ネットワークを通じて映画を普及させる企業は含まれない。


 根拠規定:「映画産業等に対する税費の支援政策に関する公告」(財政部税務総局公告2020年第25号)


5、③欠損金の繰越期間・・・10年間の詳細

◆対象企業:ハイテク技術企業及び科学技術型中小企業


 2018年1月1日以降、当年度にハイテク企業または科学技術型中小企業の資格を取得した企業は、資格取得年以前の5年間に発生した欠損金のうち、まだ補填されていない欠損金を翌年以降に繰り越すことが認められ、繰越期間の上限が5年から10年に延長される。


 当年度に資格を取得した企業の場合、2013年から2018年までの過去5年間において資格の有無にかかわらず、発生した欠損のうち未補填部分について繰越期間を10年間まで延長することができる。


 根拠規定:『財政部税務総局 ハイテク技術企業及び科学技術型中小企業の欠損金の繰越期間の延長に関する通知』(財税【2018】76号)第一条




 

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