上海MTACの太田です。
当ブログでは中国の会計・税務・労務に関する規定や実務について解説しております。
当ブログをご覧の皆様におかれましては、中国の会計・税務・労務について知り、中国子会社の財務面のサポートや中国での販路拡大にお役立ていただけると幸いです。
【企業所得税】非居住者企業への配当について
上海市税務総局の公式アカウントにて、中国国内で設立した外資企業から中国国外の非居住者企業へ配当金を支払う際の税務上の留意点について解説がありましたので、今回紹介いたします。
目次:
1.企業所得税法における非居住者企業の課税範囲について
2.非居住者企業に配当金を支払う際の源泉徴収義務者について
3.源泉徴収義務の発生時期について
4.納税地の判断について
5.租税条約上の取扱いを享受できるかについて
6.根拠規定
1.企業所得税法における非居住者企業の課税範囲について
『企業所得税法』の第三条と第四条において、非居住者企業の課税範囲を下記の通りに規定しています。
(一)非居住者企業が中国国内に施設または拠点を有する場合は、その中国国内の施設または拠点から得られる中国国内を源泉とする所得、および中国国外の施設または拠点から得られる所得であってもその施設または拠点と実質的に関連性のある所得に対して企業所得税を納付する必要があります。適用税率は25%です。
(二)非居住者企業が中国国内に施設または拠点を有していない場合、または施設または拠点を有しているがその得られる所得がその施設または拠点と実質的に関連していない場合は、その中国国内を源泉とする所得に対して企業所得税を納付する必要があります。適用税率は20%ですが、軽減税率後は10%になります。
2.非居住者企業に配当金を支払う際の源泉徴収義務者について
『企業所得税法』の第三十七条において、源泉徴収義務者について下記の通りに規定しています。
本法第三条第三項に規定する所得から生じた所得について非居住者企業が支払うべき企業所得税は、支払者を源泉徴収義務者とし、源泉徴収します。(※)
この税金は、各支払または支払期日が到来した時点で、源泉徴収義務者が支払金額または支払金額から源泉徴収します。
(※)本法第三条第三項に規定する所得から生じた所得とは、非居住者企業が中国国内に施設または拠点を有していない場合、または施設または拠点を有しているがその得られる所得がその施設または拠点と実質的に関連していない場合は、その中国国内を源泉とする所得を指します。
支払者とは、関連する法律の規定または契約上の合意に基づいて、非居住者企業に関連する金額を支払う直接的な義務を負う企業または個人を指します。
なお、『企業所得税法』の第三十九条において、源泉徴収義務者が法律に基づき源泉徴収を行わなかった場合、または源泉徴収義務を履行できなかった場合に、所得を得た非居住者企業が自ら所得の発生地の管轄税務当局に申告と納税を行うことを規定しています。
3.源泉徴収義務の発生時期について
『非居住者企業の所得税の源泉徴収に関わる問題に関する国家税務総局の公告』(国家税務総局公告2017年第37号)の第七条において、非居住者企業が源泉徴収の対象となる配当所得などの投資収益を得る場合、その納税源泉徴収義務が発生する日を実際に支払われる日と規定しています。
源泉徴収義務者は、実際の支払日に配当所得に対する源泉徴収を行い、その源泉徴収義務発生日から7日以内に、源泉徴収義務者の所在地の管轄税務当局に申告し納税する必要があります。
4.納税地の判断について
『企業所得税法』の第五十一条において、納税地について下記の通りに規定しています。
(一)非居住者企業が中国国内に施設または拠点を有する場合は、その中国国内の施設または拠点から得られる中国国内を源泉とする所得、および中国国外の施設または拠点から得られる所得であってもその施設または拠点と実質的に関連性のある所得は、その施設または拠点の所在地が納税地になります。
(二)非居住者企業が中国国内に2つ以上の施設または拠点を有し、国務院管轄の税務当局が定める条件を満たす場合は、主要な施設または拠点が納税地となり、かつ企業所得税を合算して納付することを選択できると規定しています。
(三)非居住者企業が中国国内に施設または拠点を有していない場合、または施設または拠点を有しているがその得られる所得がその施設または拠点と実質的に関連していない場合は、その中国国内を源泉とする所得は、源泉徴収義務者の所在地が納税地になります。
5.租税条約上の取扱いを享受できるかについて
『非居住者である納税者が協定待遇を享受するための管理弁法』の発布に関する国家税務総局の公告』(国家税務総局公告2019年第35号)の第三条において、下記の通りに規定しています。
非居住者企業が、協定に基づく待遇を享受できる条件を自ら判断する場合は、税務申告時に、または源泉徴収義務者を通じて源泉徴収申告時に、「協定に基づく待遇を享受する非居住者納税者のための情報報告書」を提出し、また規定に従って税務調査のための関連資料の収集や保管し、かつ税務当局の事後の監督管理に応じることにより、自らの判断で協定に基づく待遇を享受することができます。
※本規定は、非居住者企業が自ら判断することができることを規定しているのであり、その判断を認めているものではありません。税務調査により、その判断が否認される可能性もありますのでご留意ください。
6.根拠規定
『企業所得税法』
『企業所得税法実施条例』
『非居住者企業の所得税の源泉徴収に関わる問題に関する国家税務総局の公告』(国家税務総局公告2017年第37号)
『非居住者である納税者が協定待遇を享受するための管理弁法』の発布に関する国家税務総局の公告』(国家税務総局公告2019年第35号)
【顧問サービスのご案内】 弊社では各種顧問サービスを提供しております。
●月次での記帳代行
●毎月記帳証票と会計データを日本事務所に郵送して頂き、日本事務所内でのチェック
●弊社日本人担当者が3か月に1回訪中し、顧問先様の社内での記帳証票等の往査
顧問先様のご要望にあわせてサービス内容を柔軟にカスタマイズいたします。
Comments