中国販路拡大コンサルタントをしている太田早紀です。
当ブログでは中国の会計・税務・労務に関する規定や実務について解説しております。
当ブログをご覧の皆様におかれましては、中国の会計・税務・労務について知り、中国子会社の財務面のサポートや中国での販路拡大にお役立ていただけると幸いです。
【個人所得税】KOLインフルエンサーなどの個人への支払い、『労務報酬』の税金とは?⑦

中国法人による個人への業務委託のうち、ここ数年のSNSマーケティングの発展もあり、インフルエンサーへの業務委託が増えています。
※インフルエンサー:中国ではKOL(Key Opinion Leader)といいます。
そこで、個人に業務を委託する際の税金(『労務報酬』の税金)について、上海市税務総局による解説も交えて、解説いたします。
目次:
1、労務報酬の概念
2、給与賃金と労務報酬の大きな違いとは?
3、労務報酬と経営所得の区別
4、同一の役務項目で連続性があるとき
5、労務報酬所得・原稿執筆料所得・特許権使用料所得の個人所得税額計算
6、非居住者個人が取得する労務報酬所得の計算方法
7、例を挙げての計算方法の紹介
7、例を挙げての計算方法の紹介
居住者個人の労務報酬所得について
【背景】
小王さんは会社の従業員、休暇を利用し他社の設計デザイン業を請負い報酬3,000元を得た。
【計算】
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元以下・・・控除可能費用額は一律800 元
下表(個人所得税源泉徴収率表二)を適用します。

個人所得税額=(3,000-800)×20%=440元
個人所得税は源泉徴収義務者である他社が徴収し申告納税します。
小王さんの方では、個人所得税の確定申告を行うことになります。
(確定申告についてはこちらの記事をご参照ください。)
居住者個人の原稿執筆所得について
【背景】
中王さんは会社の従業員、休暇を利用し旅行関連の原稿を執筆し報酬10,000元を得た。
【計算】
スポット単位或いは月次単位の収入が4,000元超・・・控除可能費用額は収入の20%
収入から費用を控除した残額から更に70%を乗じて算出する。
原稿執筆料所得は20%の源泉徴収税率を適用します。
個人所得税額=10,000×(1-20%)×20%×(1-30%)=1,120元
個人所得税は源泉徴収義務者である他社が徴収し申告納税します。
中王さんの方では、個人所得税の確定申告を行うことになります。
(確定申告についてはこちらの記事をご参照ください。)
非居住者個人の特許権使用料所得
【背景】
老王さんは中国国内に住所がなく、訪中時に某会社に自身が所有する特許権の使用を許可し、特許権使用料所得20,000元を得た。
【計算】
スポット単位或いは月次単位の収入に20%を乗じた額を控除可能費用額とします。
税率と速算控除額は個人所得税税率表三を適用します。

個人所得税額=20,000×(1-20%)×20%-1,410=1,790元
個人所得税は源泉徴収義務者である他社が徴収し申告納税します。
中国非居住者の個人に、労務報酬を支払う場合、或いは個人に原稿の執筆を依頼した際の原稿執筆料を支払う場合或いは特許権の使用料を支払う場合、
企業などの源泉徴収義務者は、スポット単位或いは月次単位で個人所得税を源泉徴収し、申告納付します。
中国非居住者の個人にとって、源泉徴収義務者が行うスポット単位或いは月次単位での個人所得税の申告は確定申告であり、翌年度の総合所得確定申告は不要です。
【根拠となる規定】
「国家税務総局 新個人所得税法の全面施行に係る徴収管理の経過措置に関する若干の問題についての公告」(国家税務総局公告【2018】56号)
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